IDA (Interactive Disassembler) は、Hex-Rays社が提供するバイナリ解析ツールとして、リバースエンジニアリングやマルウェア分析に幅広く使用されています。
2024年9月30日にリリースされたIDA 9.0では、従来の永久ライセンスからサブスクリプションモデルへ移行しました。ライセンス契約期間中、最新の機能を常に利用できるようになり、サポートも強化されています。
目次
新バージョンの主な機能
- nanoMIPSやWebAssembly (WASM)のサポート
- ヘッドレス処理による自動化強化 (idalib)
- FLIRT* Manager によるシグネチャ管理
| * FLIRT (Fast Library Identification and Recognition Technology) サインチャーとは、Hex-RaysのIDA Proに搭載された技術で、バイナリコード解析時にライブラリ関数を自動的に識別します。これにより、既知のライブラリ関数をユーザーが手動で解析する手間を省き、解析を効率化します。FLIRTは、多くのライブラリのサインを持ち、標準ライブラリや一般的なソフトウェアのコンポーネントを迅速に認識できます。これにより、リバースエンジニアリング作業が大幅に簡便化されます。 |
Hex-Rays社のメーカーWEBサイトでは、最新ニュースが配信されています。ぜひご参照ください。
Discover IDA 9.0: Exciting New Features and Improvements
https://hex-rays.com/blog/discover-ida-9.0-exciting-new-features-and-improvements
IDA 9.0ラインアップとプランの変更
新バージョンIDA 9.0では、以下のラインアップとプランが提供されています。
- IDA Pro: 企業向けの高度なバイナリ解析ツール
- IDA Home: 個人向けの手頃なリバースエンジニアリングツール
- IDA Free: 基本機能を評価できる無料版
- IDA Classroom: 教育機関向けの強力なツール
- IDA Pro OEM: 商用向けで、ソフトウェアやSaaSにIDAを組み込むためのライセンス
IDAのサブスクリプションプランと特徴
IDA Proのサブスクリプションは、デコンパイラの数・種類で異なります。EssentialからUltimateまでのプランがあり、それぞれクラウドベースまたはローカルでデコンパイラを選択できます。
アドオンとして、Private LuminaとTeamsが提供され、プロジェクトの効率化やコラボレーションを強化します。
| プラン | 主な特徴 | デコンパイラ詳細 |
|---|---|---|
| IDA Pro Essential | 基本的な逆アセンブリ、デコンパイル機能 | 2つのクラウドベースデコンパイラ x86 (32/64), ARM (32/64), MIPS (32/64とnanoMIPS), PPC (32/64), ARC, RISC-V (32/64) |
| IDA Pro Expert (2/4/6) | ローカルデコンパイラ 2, 4, 6つ選択 |
ローカルデコンパイラ x86 (32/64), ARM (32/64), MIPS (32/64とnanoMIPS), PPC (32/64), ARC, RISC-V (32/64) |
| IDA Pro Ultimate | 全てのローカルデコンパイラに対応 | すべてのローカルデコンパイラが含まれ、最新デコンパイラにも自動アクセス |
| IDA Home | 個人向けプラン | 2つのクラウドベースデコンパイラ x86, ARM, MIPS, PPC, ARC, RISC-V |
| IDA Free | 無料版で基本機能を評価 | x86 (32/64) クラウドベースデコンパイラ2つ |
| IDA Classroom Free | 教育機関向け無料プラン | x86 (32/64) と ARM (32/64) クラウドベースデコンパイラ4つ |
| IDA Pro OEM | 商用向け逆アセンブリ、デコンパイル機能 | すべてのローカルデコンパイラが含まれ、60以上のプロセッサファミリに対応 |
※教育機関向けの割引付き IDA Pro プラン (IDA Pro w/Classroom discount) もございます
アドオンについて
Private Lumina と Teams は、IDA ProまたはIDA Pro w/Classroomのアドオンとしてのみ利用可能です。
Private Lumina は、バイナリ間で認識された関数のライブラリを組織内 (セルフホスト型サーバー) で共有するためのアドオンです。ローカル環境や社内サーバーで関数識別機能を強化し、既知の関数の再利用をサポートします。これにより、他のエンジニアが解析した関数を共有し、プロジェクト全体の効率を大幅に向上させることが可能です。
Teamsアドオンは、IDA Proに同期やリビジョン管理機能を追加するアドオンで、複数のメンバーが参加するプロジェクトや企業向けに最適です。リアルタイムでのファイル同期や正確な変更履歴の共有が可能となり、特に大規模プロジェクトやリモートワークにおいて効果を発揮します。
一方、IDA Home、IDA Free、およびIDA Classroom Freeでは、これらのアドオンは利用できません。対象プランを利用される場合は、Public Luminaサーバーにのみアクセス可能です。このサーバーでは、Hex-Rays社が管理する共有機能メタデータにアクセスし、他のPublic Luminaユーザーと情報を共有することができます。
サブスクリプション移行のメリット
従来のIDAは永久ライセンスでの提供でしたが、IDA 9.0 からサブスクリプションモデルへ移行しました。
サブスクリプション契約期間中は、最新バージョンのアクセスやサポートが提供されます。契約は1年単位で、2年、3年契約にはボリュームディスカウントが適用され、更新手続きの煩わしさを軽減できます。
ライセンスの種類は以下の通りです。ライセンスプランによって選択肢は異なります。
- Named License: 登録ユーザー1名が使用可能
- Computer License: 1台の特定のコンピュータにライセンスを付与
- Floating License: サーバー経由で複数のユーザーが共有可能
旧ライセンスをお持ちの方へ
IDA の既存ユーザーの皆様は、永久ライセンスからサブスクリプションライセンスへ切り替えることで IDA 9.0 以降をご利用いただけます。サブスクリプションを選択しない場合、お持ちのバージョンの IDA を引き続き利用できます。
なお IDA v8.4 のアクティブなサポートライセンスをお持ちの場合、サポート期間内は v9.0を無償でご利用いただけます (その後は v9.0の機能は制限されます)。
また、IDA Teamsライセンスをお持ちの方も、IDA Pro 9.0への移行がサポートされています。旧IDA Teamsライセンスは廃止されましたが、その機能は引き続き利用でき、IDA Proサブスクリプションプランにおける有料のTeamsアドオンとして提供されています。
Teamsライセンスの変更について
-
移行方法: 既存のIDA Teamsユーザーは、IDA ProサブスクリプションプランにTeamsアドオンを追加して移行できます。以前のIDA Teamsライセンスよりも低コストで利用が可能です
- サブスクリプションプラン: Teamsアドオンは、IDA Pro Ultimateプランには無料で含まれており、それ以外のプランでは有料オプションとして追加できます
※IDA 9.0で作業した一部ファイルは、旧バージョンとの互換性がない場合がありますのでご注意ください
IDA 9.0 に関する概要のまとめ
IDA v9.0 に関する FAQ は以下のメーカーページをご参照ください
knowledge base
https://hex-rays.com/faqs
- 契約期間: 1年～3年
- ライセンス: Named、Computer、Floatingの3種類
- 永久ライセンス: IDA 9.0以降は利用不可
- サポート期間終了前のライセンス切り替え: 追加費用なしでサブスクリプション移行可、終了日は変わらず
- デコンパイラ購入: 個別購入不可
- デコンパイラ数の変更: 上位プランへのアップグレード可、ダウングレードは不可
- 試用版でのデモ: IDA Proの無料トライアルはなく、基本機能はIDA Freeで確認可能
まとめ
今回のIDA 9.0リリースに伴い、Hex-Raysはライセンス形態をサブスクリプションモデルへ移行し、ユーザー様にとってより利便性が向上しました。サブスクリプションライセンスにより、常に最新バージョンのソフトウェアへのアクセスが保証され、継続的なアップデートや新機能の利用が可能です。さらに、重大な問題や脆弱性のホットフィックスが提供されるため、常に安心して製品を使用できます。
また、Hex-Raysでは「電子メールによるテクニカルサポート (英語) 」が提供されており、ユーザーはサポートチームから迅速な対応を受けることができます。ユーザー専用のオンラインフォーラムへのアクセスも可能となり、他の専門家やユーザーとの情報共有や技術的なサポートを受けられる環境が整っています。
Hex-Rays IDA の新規ライセンス、および既存ライセンスの更新 (切り替え)は、お気軽にユニポスにお問い合わせください。
テガラ株式会社は、IDA の提供元である Hex-Rays 社の Distributors として、IDA のリセラー認定を受けております
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