実験やデータ収集では様々な機材が必要になりますが、その一例として異なる機材・器具同士を設置・固定する治具が必要になるケースがあります。
テガラでは、お客様の研究開発に必要な治具の試作や、研究開発に必要な環境を一式でご提供するサービス (※)をご提供しています。今回は、ハイスピードカメラで撮影したデータを効率的に保存することを目的とした環境づくりの例をご紹介します。
※研究開発に必要な環境を一式でご提供するサービス 「テガラのターンキーシステム」についてはこちらをご参照ください
ハイスピードカメラで撮影したデータ用の保存環境を作ってみる
ハイスピードカメラで撮影したデータは、スマートフォンなどと同様にカメラに内蔵されたメモリに一時保存されます。メモリ容量が大きいほど長時間の撮影が可能ですが、ハイスピードカメラの特性上、数秒の録画でも非常に大きなメモリ領域を必要とします。そのため、撮影データを効率的に保存・管理するための適切なストレージ環境を構築することが重要です。
本記事では、海外製品調達・コンサルテーションサービス「ユニポス」(テガラ株式会社 運営)が、カナダ KronTechnologies 社の認定リセラーとして販売している、ハイスピードカメラ Chronos 4K12 を例に説明します。
最新の2モデルのうちChronos 4K12は、4Kの高画質撮影のために、大容量の保存用ストレージを必要としています。具体的には、1,677万色の表現が可能な8ビットの色深度 (赤、緑、青の256階調を組み合わせ) で4K撮影を行う場合、1秒間に1,397フレームの高速度撮影が可能です。この非圧縮 (RAWデータ) のdngファイルは、わずか5秒で約100GBに達します。
一般的なビデオカメラでは、人間が1秒間に認識できる30~60フレーム程度しか捉えることができません。しかし、ハイスピードカメラではこれをはるかに超えるフレーム数を記録できるため、通常では見逃してしまうような高速な動きをも鮮明に捉えることができます。ストレージやメモリ容量が必要になる理由はここにあります。
※Chronos 4K12/Q12の詳細については、以下の記事をご参照ください
撮影環境のセッティング
従来モデルのChronos 1.4/2.1-HDハイスピードカメラは内蔵メモリのみを使用していたため、十分なデータ保存領域を確保するにはストレージの追加が必要でした。そのため、Chronos Camera用マウンタ (SATAのSSD用) のCADデータが公開されておりました。
従来モデルのマウントの詳細は、Kron社の公式サイトをご参照ください。
Kron Talk;Topic: SSD Cage for Chronos 1.4/2.1-HD – 3D-printable
https://forum.krontech.ca/index.php?topic=533.0
最新モデルのChronos 4K12/Q12は、メモリオプションに加えて1TBのNVMe SSD内蔵ストレージを備えています。そのためか、2024年5月22日現在、SSD増設用のカメラマウンタに関する情報は公開されていません。
1TBのストレージはある程度のデータを保存するのに十分ではありますが、ストレージ容量が多ければ多いほど、撮影もスムーズになります。ただし、カメラマウンタがない状態でSSDを接続する場合、撮影中に落下する可能性があります。
こういった状況に陥らないためにも、安全かつ時間を気にせず撮影したいというご要望が多く寄せられています。
そこで、弊社ではChronos 4K12/Q12の実機サイズを確認し、新モデルに対応したSSDマウンタを設計し、試作いたしました。
構築した環境の概要
具体的には、下記の要件を満たす仕組みを想定しています。
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前述の要件を踏まえて、以下のようなマウンタを3Dプリンタで製作しました。
用意・作成したパーツ
- Samsung SSD 870 EVO SATA 2.5″ (MZ-77E500B/IT)
- WAVLINK USB-C to SATAアダプタ (WL-ST503C)
ホルダーは電源ボタンや録画ボタンの邪魔にならない位置に固定する形で設計し、6~10mm径の穴に対応した、M4 x 8mm のネジで固定しました。
Chronos 4K12/Q12の背面や側面のインターフェースにマウンタが被らない形状をしています。また、SSDをスムーズに抜き差しできるよう、マウンタの内部はフラットになっています。
カメラ上部から前面に飛び出るものの、レンズ調整時に障害になることはありません。
SSDを安全に固定でき、撮影中の落下を防ぎます。また、SSD交換時には、切り欠き加工部よりSSDを押すことで簡単に取り外しできます。
まとめ
今回は、Chronos 4K12/Q12 用のマウンタを設計、試作しました。実際にSSDとSATA変換アダプタを使い、データ保存までを確認しました。
Chronos 4K12/Q12のご検討されている方で、外部ストレージやマウンタをご希望の方がいらっしゃいましたら、お問い合わせの際に「Chronos 4K12/Q12 ホルダーパーツ希望」と、お知らせください。
Chronos 4K12/Q12 ホルダーパーツ
- 3Dプリンタで印刷したパーツ
- STLファイル
- STEPファイル
なお、ホルダーパーツは試作品のため、もし使用感のフィードバックがございましたら感想をお聞かせいただけますと幸いです。設計の改善に活用させていただきます。
また、テガラでは、お客さまのご要望に応じた物品の調査や提案、治具などの設計・試作サポートを承っています。ご相談の時点では、はっきりとしたイメージが固まっていなくても問題ありませんので、「こんなものが欲しい」というご要望をお聞かせください。
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