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本記事では、AI教育、プログラミング教育の分野での教育キット myCobot – Artificial Intelligence Kit を紹介いたします。
目次
広がるAI人材の需要拡大とSTEM/STEAM教育
AI技術をはじめ、様々な情報技術が進歩していく中で、DXでの業務効率化やデータ活用、工場の省人化などの様々な分野でデジタル技術を活用できる人材が求められています。そして、今後もその流れが拡大していくのは間違いないでしょう。
しかし、現実に目を向けると、AI人材の需要の拡大に対して人材の確保は追いついているとは言い難いでしょう。研究機関から民間企業、行政まで多くの組織でAI人材の不足が発生しています。
日本国内でも義務教育におけるプログラミング教育の必修化がされておりますが、初等~中等教育向けや高等教育機関向けにとどまらず、社会人向けの情報教育市場も出現し、その市場規模は拡大し続けています。このように、人材不足解消の方法の一つとして「教育」に多くの注目が集まっています。
事実、学校教育においてはScience (科学) 、Technology (技術) 、Engineering (工学) 、Mathematics (数学) の頭文字を取ったSTEM教育、これにArt (芸術・リベラルアーツ) を加えたSTEAM教育を文部科学省も推進していますし、学校教育から離れたコンテンツや催しでも、STEM/STEAM教育との関連性や重要性が訴えられています。
このようなデジタル人材の教育は、日本国内だけでなく様々な国々で推進されており、年齢や学習レベルごとに多種多様な教育向けのキットが世界中で発売されております。
今回ご紹介する Elephant Robotics社の myCobot – Artificial Intelligence Kit は、これからのSTEAM教育と特に関係性が深いと言われるAIやロボティクス分野の学習に適した製品として、注目を集めています。
参考:
GMOメディア×船井総合研究所『2022年プログラミング教育市場規模調査』 2022年のプログラミング教育市場は302億円 子ども向けは前年比113%の199億円と2桁成長を続ける ~子ども向けプログラミング教育市場は2030年には1,000億円超に拡大する可能性も~
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myCobot 280 Pi + Artificial Intelligence Kit とは
教材としての機能から見た Artificial Intelligence Kit
AIやロボティクスという単語からは「自動運転での道路や標識の認識」「人物の認識」「表情の認識」「機械学習」「制御系」など様々な要素が連想されるかと思います。しかし、実世界での適用は決して単純なものではなく、周辺環境や要求仕様、対象物の形状など様々な要因によって複雑なものになりがちです。
一方で「AIやロボティクスの学習」にフォーカスした場合、初期段階においては仕組みや技術の概要を理解しやすいことが重要なポイントの一つとなり、課題や動作を可能な限り単純化したモデルに落とし込むことが学習でのアプローチとして非常に有効です。
Artificial Intelligence Kit の内容物
Artificial Intelligence Kit の内容物は、その単純化を重要視した構成です。
具体的には「カメラ」「色付きの Material Box」「3色の Trash Bins」「ブロック (sticker付属) 」がセットになっており、カメラでブロックや色付きの Material Boxを検知して物体を目的の場所へ移動させるという課題をシンプルな内容で実現しています。
ソフトウェア面では、主要なプラットフォームや言語として、ROS, Python, C++ 等に対応し、開発環境の構築方法等のドキュメントも豊富に用意されています。そのため、プログラミング言語の学習用途としても有効です。
初めてAIやロボティクスに触れる方や初学者の場合、プログラミング言語を用いたコーディングがハードルとなってしまう場面もありますが、myCobot はビジュアルプログラミング myBlockly にも対応しています。ビジュアルプログラミングの利点は、「アームをA地点に動かす」「物をつかむ」といった動作を、ドラッグ&ドロップの直感的な操作でプログラミングできることにあり、一般的なプログラミング言語の文法を覚えることなく、プログラミング的思考を学ぶことができます。
■myBlockly
プログラミング初心者向けのビジュアルプログラミング用ソフトウェア。ドラッグ&ドロップだけで複雑な機能のアプリケーションを開発することができる。
プログラミング的思考とは、言い換えれば物事を分解し、正しく組み合わせる思考です。
例えば、「オレンジ色のキューブを緑のボックスに掴んで入れる」という動作を行う場合、下記のように1つの動作を更に細かい動作に分解して、動きの流れを組み立て、実行する必要があります。
1 | 画像処理でオレンジのキューブの座標A、および緑のボックスの座標Bを特定する |
2 | 座標Aにロボットアームを移動させる |
3 | 物をつかむ動作をさせる |
4 | 座標Bにロボットアームを移動させる |
5 | 物を離す動作をさせる |
このように、特定の目的に対して必要な要素を分解し適切に組み合わせる思考方法は、プログラミングに限定されるものではなく、あらゆる職業や作業に応用が可能な能力です。そのような観点から、学習のハードルを下げたビジュアルプログラミングは考える力を養うための教材として、評価されています。
参考:
プログラミング的思考とプログラミング力の関係
プログラミング的思考とは?文部科学省の資料を用いてわかりやすく解説!
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画像認識における機械学習の活用
1 | 画像処理でオレンジのキューブの座標A、および緑のボックスの座標Bを特定する |
先程は上記のように一行で簡単に記載しましたが、このたった一行の動作についても「キューブを画像で認識する」ためには画像処理が必要で、単純な処理とは言えません。
また、一般的な用途での活用を想定した場合の課題解決では「オレンジの色を認識する」以上に複雑な、人物検知、物体の認識や判別といった幅広い処理が求められます。
Artificial Intelligence Kit では、それらのような画像処理や機械学習の題材もカバーすることが可能です。
参考:Identify picture blocks (Elephant Robotics) ※外部サイトに飛びます
参考サイトに記載された手順の通り、Artificial Intelligence Kit ではOpenCV や tensorflow を使用して作成された画像認識用の学習モデルが用意されています。そのため、パッケージを導入することで、画像認識までの一連の流れを実装することができます。
上記はAIモデルの学習ではなく、学習済みモデルの活用ではありますが、数年前と比較しても機械学習の利活用は私達にとって身近なものになっており、基礎的な内容を体感しやすくなっているのは魅力的です。
機械学習に興味をお持ちのお客様は、よろしければ下記の記事をご覧ください。
myCobot 280 の詳細スペック
Artificial Intelligence Kitと合わせて使用するmyCobot のロボットアーム本体のスペックをご紹介します。
myCobot は中国 Elephant Robotics 社 と M5Stack 社が共同開発する、小さくて軽い、モジュラーデザインの6軸 協働ロボットです。
本体重量850gと軽量ながらも250gのペイロード能力をもち、アームの長さは350mm、さまざまなエンドエフェクタを取り付けることで、科学研究や教育、スマートホーム、軽工業など多分野のアプリケーションに対応します。
myCobot 280 本体の主な仕様は下記の通りです。
サイズ感はほどほどで、Payloadも最低限の物体の持ち上げができるスペックであり、卓上での動作に最適です。
【mycobot 280 本体仕様】
Degree of Freedom | 6 |
Payload | 250g |
Arm span | 350mm |
Working radius | 280mm |
Repeatability | ±0.5mm |
Weight | 850g |
Power Input | 8V, 5A |
Working Condition | -5°~45° |
Communication | USB Type-C |
AI教育キットの活用事例
中国は、2017年には小学校でのプログラミング教育を始めるなど、STEM/STEAM教育が活発な国の一つです。
下記の動画は中国福建省のとある高等職業技術学校におけるArtificial Intelligence Kit 合計20数セットの導入事例です。
教育プログラムの内容は、Elephant Robotics社のgitbookをベースとした内容でカリキュラムが組まれているようです。
また、今回紹介の myCobot と類似したコンセプトの製品に、 Niryo 社のロボットアームがあります。
仏ブルゴーニュ大学では協業ロボットの制御学習のために、同社のNiryo One および周辺キット Conveyor belt と Vision Set を講義に導入しました。
詳細はこちらの関連記事よりご確認いただけます。
まとめ
今回一例を紹介いたしましたが、海外には多種多様なSTEM/STEAM教育関連製品があり、調達のご依頼を多くいただいていております。
弊社では長年の実績から中国をはじめ、海外からの製品調達ノウハウが豊富です。
もしも調達をご検討されている製品がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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