研究開発者向け海外製品調達・コンサルテーションサービス「ユニポス」では、お客さまから「修理パーツを入手したい」「用途に合わせた専用パーツが欲しい」といったご相談をいただくことがございます。
弊社ではこうしたご要望に対応するため新たに3Dプリンタを導入しました。
今回は3Dプリンタの試運転をかねて、弊社で経年変化で破損したロボットアームの脚パーツを3Dプリンタを使用して再現した様子をご紹介します。
事例:経年劣化によるパーツ破損
弊社では検証用に卓上ロボットアームNiryo NEDを所有しております。
ロボットアームは小型でも動作時には慣性力、遠心力が生じるため、脚回りがガタガタした状態では使用することができません。
しかし導入から約3年が経過し、底面の脚のパーツ4個のうち2個が経年変化により損傷していました。
脚さえ直れば使えるのに!
アーム本体の動作に不具合はなく、脚さえ直れば使用を再開できる状態です。果たして修理は可能でしょうか?
まずは壊れた脚パーツを観察します。
黒い樹脂素材の表面に水平の層が確認でき、3Dプリンタで成形されているようです。
また破損したパーツは4個中2個なので、正常なパーツから3Dデータが作成できます。
そこで今回は新たに導入した3Dプリンタで、交換用の脚パーツを作ることにしました。
壊れたパーツを再現してみよう!
正常な脚パーツの特徴を確認し、3Dプリンタで再現します。
破損した脚の特徴
- 材料:PLA (Poly-Lactic Acid) フィラメント
- 3Dプリンタのプリント設定:不明
用意したもの
- 3Dプリンタ (Snapmaker 2.0 Modular 3-in-1 3D Printer A350T)
- ノギス
- PLA フィラメント
- 比較用のフィラメント (ABS、PETG、炭素繊維PC、TPU)
- CAD ソフトウェア(Autodesk – Fusion 360)
- 3Dプリンタ接続用ソフト (Snapmaker Luban)
手順
- NED 本体から破損した脚を取り外す
- ドライヤーで熱しながら破損部分についたゴムを取り外し、ボルトやねじも外す
- 正常な脚のパーツのサイズをノギスで測り、同等のサイズの3D CAD modelを作成
- 3D printer’s splicing software (Snapmaker Luban) を用いて3D modelのG-codeを作成
※G-codeは機器の動作を制御するNCプログラムの一種 - 作製したデータをもとにPrint
- 手順2で取り外したゴムを両面テープで繋ぎ、ボルトやねじも戻す
- 完成したパーツをNED本体に取り付ける
結果
作業時間は全体で約3時間、そのうち3Dプリンタでの印刷は2個で約80分でした。
完成品はオリジナルのパーツとほぼ見分けがつきませんでした。
純正パーツと再現パーツの比較
充填率
破損した脚の断面を確認しましたところ、空洞になっていました。
そこで印刷時は強度を高めるためにfill percentageを上げて空洞部分を減らました。
※今回は強度のテスト、比較は行っておりません
熱耐性
本体から脚パーツを取り外す際に、ドライヤーで温めてゴム部品の接着を緩めましたが、破損した脚パーツはドライヤーの熱で変形が発生しました。
どちらも材質は同じPLAですが、印刷したばかりのパーツでは同じ時間ドライヤーで熱を加えても変形は見られませんでした。
FDM3Dプリンタの材質のご紹介
今回はPLAを用いましたが、作るパーツの用途によりフィラメントの材質を変更できます。
参考のため別の材質でも同じパーツを作ってみました。
それぞれの材質の特徴は下記のとおりです(参考サイト)。
- PLA (Polylactic acid)
5種類の中では最も印刷しやすい
生分解性があり、高熱や応力で変形したり溶けたりする傾向があるため、屋外での使用には不適 - ABS (Acrylonitrile butadiene styrene)
中程度の耐久性、耐衝撃性 - PETG (Polyethylene terephthalate, glycol modified)
中程度の耐久性、強度
PLAやABSよりも柔軟性がある - Carbon Fiber PC (Carbon fiber reinforced polycarbonate)
軽量で強度、柔軟性、耐久性、熱耐性があり工業部品に最適 - TPU (Thermoplastic polyurethane)
非常に柔軟性があり、耐油性や耐摩耗性に優れる
まとめ
今回は、3Dプリンタを活用して脚パーツの代用品を作成しました。
ロボットアームの安定した動作には脚回りのパーツは必要不可欠!思いのほか満足のいく代替パーツを作成でき、これからもNEDを安心して使い続けることができます!
3Dプリンタの速さや手軽さもさることながら、3Dモデリングの正確性は試作品づくりにも有用と思われます。
「3Dプリンタパーツ試作サービス」のご紹介 今回の例をはじめ、弊社では海外製品調達サービスユニポスで提供しているハードウェアやオープンソースの開発キットの部品について、代替品やカスタム部品、付属品の試作のご相談を承っております。 |
この記事を書いた人 : 新規事業開発室 エルメル この記事を書いた日 : 2022.8.29 |
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