【特集記事】STI for SDGsで切り開く国際社会の未来

STI for SDGsの概要

2019年9月に行われた国連SDGサミットにおいて、2030年までをSDGs達成に向けた取り組みを拡大・加速するための「行動の10年」と定められました。

しかし、その後に発生した新型コロナウイルス感染症の拡大が、世界中の人々の生命や生活、安全保障における驚異となっており、SDGs達成に向けた取り組みの遅れが懸念されます。コロナ禍を乗り越えるだけでなく、よりよい復興を目指した取り組みが国際社会全体に求められているテーマであり、そのためには国家間の連携が必要不可欠です。

こうした状況下でSDGsの目標達成を実現するには、科学技術イノベーション (Science, Technology and Innovation for Sustainable Development Goals:略称 STI) をいかに活用できるかが重要なポイントになります。

SDGsにおけるSTIの重要性は国際社会においても共通認識であり、国連では技術促進メカニズム (Technology Facilitation Mechanism) を立ち上げ、それぞれの国や国連・関係機関、政治フォーラムなどでSDGs実現に向けた活動の一環としてその役割を果たしてきました。
そして、現状でもSTIと規制改革などの政策を連携させることによって、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナやSDGs目標の達成が期待されており、STIを更に加速させることが世界的な課題となっています。

【関連記事】

 

STI for SDGsの取り組み

SDGsの目標達成に必要となるのは、科学技術イノベーション (STI) の活用です。科学技術同士の組み合わせや融合が、イノベーションやSDGsを推進する活動の原動力となります。

科学技術同士の融合は、「自然環境の保全」と「豊かな暮らし」を両立させる上で必要不可欠であり、特に多方面での融合・活躍が望まれるのはデジタル技術です。ビッグデータやAI、ブロックチェーンなどの技術は、プライバシーやセキュリティなどクリアしなければならない課題はありますが、サイバー空間とフィジカル空間を融合させ、物理的な環境や状況に依存しないサービスを提供する上での助けとなることが期待されています。

デジタル技術とその他の技術が融合した例としてわかりやすいものでは、作物の状態をデジタル技術で管理するスマート農業が有名です。その他、医療・バイオ的な面ではヒト研究とデータ研究の加速で個別予防や予見医療の具体化を目指す IoBMT (Integration of Bio-Medical Things) 戦略があります。また、センシング技術・ロボット技術と生活・労働環境を融合させることにより人とロボットの共生システムが開発推進されています。このように、既に様々な科学技術の融合が進んでおり、我々の生活にも浸透しているのがわかります。

【関連記事】

 

SDGs推進における文部科学省の取り組み

SDGs目標達成に向けて、国内でも各省庁が様々な取り組みを推進しています。

その中でも、文部科学省は人材育成と戦略的な国際展開の施策において中心的な役割を果たす立場であり、「STI for SDGsの推進に関する基本方針」を発表し、その実現のために「STI for SDGs 文部科学省施策パッケージ」を策定しました。

このパッケージでは、

・あらゆるステークホルダーや当事者の参画を重視したSTI for SDGsの取り組みを実施することで、STI(科学技術イノベーション)のあり方に変革を促すこと

・パッケージに盛り込まれた施策について、俯瞰的なアプローチで体系的・戦略的に実施。毎年の概算要求でも適切に反映させて、STI for SDGsの戦略的な推進を図る

などが狙いとして掲げられています。
つまりは、SDGs目標達成をマクロな視点で捉えつつ、あらゆる関係者の参画を促して科学技術イノベーションを効果的に推進していこうという考え方です。

具体的には、SDGs17の達成目標のうち「目標9:インフラ、産業化、イノベーション」と「目標17:実施手段」をSTI for SDGs全体に関わる横断的・共通的な取り組みとしてベースに据え、「海洋・水」「都市・防災」「環境・エネルギー」「健康・医療」それぞれの分野の発展を推進しようという構図となっています。

このように、俯瞰的・マクロ視点で科学技術イノベーションを推進する上で、人材育成や活動の機運を高めるアプローチが欠かせません。
その取り組みの一環として、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)によって2019年度より「STI for SDGs」アワードが行われています。この取り組みは未来創生推進事業の一環として、科学技術イノベーションを用いて社会課題を解決する地域における優れた取り組みを表彰する制度です。
受賞した取り組み内容はJSTの情報発信サイトでの掲載や関連イベントでの登壇など、広く知ってもらう機会が与えられる他、面接選考で選考委員からアドバイスやメッセージがあり、取り組みの幅を広げるヒントを得ることができます。

 

STI for SDGsとSociety5.0のつながり

日本におけるSDGsの達成に向けた取り組みは、超スマート社会(Society 5.0)の実現が柱になっています。Society 5.0の実現に向けた提言は、科学技術の組み合わせによる推進が提唱されており、Society 5.0とSDGsの達成が密接に関係していることが示されています。

年齢、性別、居住地など様々な違いはあれども、科学技術イノベーションの発展と活用によって、全ての人が格差なく平等に生活できる社会を目指すことがSociety 5.0の狙いです。

【関連記事】

 

まとめ

科学技術テクノロジーの革新と融合がSDGsの目標達成に大きく貢献するという考えのもと、世界各国が取り組みの推進を加速させています。日本ではSociety 5.0の実現を通してSTI for SDGsを推進しており、文部科学省も科学技術テクノロジー推進のための体制づくりや人材・環境育成に力を入れています。

国や地域ごとに様々な問題があり、その大部分を解決するためには科学技術テクノロジーの推進が欠かせません。日本でも地域格差や労働力問題などが取り沙汰されますが、そのような課題は決して日本に限った話ではなく、大小の差はあれども世界中で類似性のある問題は存在します。そのため、グローバル視点・マクロ視点で問題を捉え、より多くの人や地域で活用できる解決方法が望まれています。

また、環境や資源の問題も非常に深刻であり、クリーンなエネルギーとその高効率な活用は2030年以降も豊かな地球を守り続ける「誰ひとり取り残さない社会」を実現するために欠かせません。

科学技術の組み合わせ・融合がもたらす新たな情報・価値基盤とチャンスについて、弊社でも関連情報を積極的にご紹介してまいります。
関連する商品や研究開発環境の構築など、お力になれそうなことがございましたら、気兼ねなくご相談ください。