自動車業界では、CASEと呼ばれる4つのメガトレンド(コネクティッド・自動運転・シェアリング・電動化)に基づき、次世代の自動車開発が進んでいます。
機械式でコンピュータ制御が入っていないレガシー車と比較するとその差は歴然で、車を取り巻く通信技術の発展に気づかされます。
5Gの出現により、ますます車載通信ネットワークの重要性が注目されており、最新動向でも、低速のCANやLIN、高速のEthernetやHDBase-Tから、クラウド、セキュリティなど話題に事欠きません。
その中で今回は、低速と言われながらも依然として高い人気が続くCANバス、CANの代替規格のLIN、Modbusなど、産業用通信プロトコルに関連した製品をご紹介します。
目次
1.CAN(Controller Area Network)
CAN(Controller Area Network)は、ホストコンピュータなしでマイクロコントローラやデバイスが相互に通信できるように設計された、耐ノイズ性の強化が考慮された堅牢なビークルバス規格の一つ。
自動車・バス・列車をはじめとする一般的な移動機械(ビークル)の制御情報転送用として普及しましたが、現在は、CANの高い性能と信頼性より、産業用途(輸送機械、工場、工作機械、ロボティクス分野)でも利用されています。
用途: CAN通信モニタ、アプリケーション機器のテスト、車載CAN、制御機器、データ収集 等
■LAWICEL社製CAN通信アダプタ
スウェーデンに拠点を置くLAWICEL社製CAN通信アダプタ 「CANUSB」 は、コンピュータ(デスクトップまたはノートパソコン)のUSBポートに接続するだけですぐCAN信号の送受信が行えるツールです。USBケーブルは着脱でき、バスパワーで給電を必要としません。低コストでとても使いやすい CAN to USBのドングルです。
FTDI-USB ドライバによって標準のCOMポート(シリアルRS232ポート)として扱うことができます。またCANの高速化やCANバス使用率(バス負荷)を高める場合にはデータリンク層(DLL)のドライバを利用できます。送受信は、標準のASCIIフォーマットで行えます。
C, C++, Visual Basic 6, Delphi, LinuxなどのCANUSB用のサンプルプログラムは、こちら(メーカーページ)よりダウンロード頂けます。
CANUSB / LAWICEL社製CAN通信アダプタ メーカー(LAWICEL AB)Webサイト |
■Kvaser USBcan Light 2xHS 等
KvaserのすべてのCANインターフェースは、自動車および商用車用に設計されています。高速および低速CANに接続するためのCANインターフェイスとデータロガー、自動車のメカトロニクスノードに通常使用される安価なシリアルバスであるLINなどがあります。
今回ご紹介する「Kvaser USBcan Light 2xHS」は、USB経由で簡単にPCと接続することができる(プラグアンドプレイ対応)、2つのハイスピードチャンネルを持つCAN-Busインターフェイスです。
コンパクトでありながら 11-bit (CAN 2.0A) と 29-bit (CAN 2.0B active)両方に対応しており、コンピュータ(デスクトップまたはノートパソコン)に接続する際とても便利です。なお上位版 Kvaser USBcan Pro 2xHS v2はCAN FDにも対応しています。
MathWorks (マスワークス)の数値計算ソフトウェア MATLABのVehicle NetworkToolbox*は、最新バージョンのKvaserCANLibドライバーライブラリを使用するKvaser CAN インターフェースをサポートしています。Kvaser CANデバイスを使用して、CANバスデータをMATLABおよびSimulinkにストリーミングすることができます。
* Vehicle NetworkToolboxには, CAN、CAN FD、J1939、および XCP のメッセージの送受信や符号化、復号化を行うためのMATLAB 関数や Simulinkブロックが用意されています。
What Is Vehicle Network Toolbox?
https://jp.mathworks.com/videos/what-is-vehicle-network-toolbox-1535487350674.html
□ Kvaser CANlib SDK
KvaserCANインターフェース用のソフトウェアを開発するために必要なすべてを含む無料のリソース。C、C ++、C#、Delphi、およびVisualBasicで記述されたドキュメントと複数のサンプルプログラムは、こちら(メーカーページ)よりダウンロード頂けます。
Kvaser USBcan Light 2xHS 等 / デュアルチャンネルのUSB-CANバスインターフェイス メーカー(Kvaser)Webサイト |
■SK Pang Electronics PiCAN2/PiCAN3 Bus Borad
SK Pang Electronicsの「PiCAN2 CAN-Bus Board」「 PiCAN3 CAN-Bus Board」は、Raspberry PiでCAN通信を実現するための追加ボードです。Raspberry Pi 2 または Raspberry Pi 3に対応したPiCAN2と、Raspberry Pi 4に対応したPiCAN3がございます。
Microchip社製 CANコントローラ MCP2515 と CANトランシーバ MCP2551を搭載しており、DB9(D-Sub9ピン)、もしくは 3 way screw terminal (3 Wayスクリューターミナルブロックコネクタ)でCAN接続します。
また簡単にSocketCANのドライバのダウンロードができ、C もしくは Pythonでプログラミングが可能です。ロボットカーや移動ロボットにも使われるRaspberry Pi と車載ネットワークであるCANを使用して、車両情報を取得、車両診断の学習や研究に役立てることができます。
PiCAN2 / PiCAN3 CAN-Bus Board for Raspberry Pi / Raspberry Pi にCAN-Bus機能を追加するためのボード メーカー(SK Pang Electronics Ltd)Webサイト |
2.LIN(Local Interconnect Network)
CANの代替規格と言われるLINは、自動車のボディ制御系(パワーウィンドウ、ミラー調整、ドアロック等)に使われる通信プロトコルです。LINはCANバスの完全な代わりにはなりえませんが、速度/帯域幅が重要でない場合には、CANよりさらに低コストである点も含め優れた代替バスといえます。
用途: 車載ネットワークの低コスト化、制御機器、アプリケーション、LIN通信の監視、通信テスト等
■Lipowsky Industrie-Elektronik 社製 Baby-LIN シリーズ
ドイツのLipowsky Industrie-Elektronik社 (リポウスキー) のBaby-LIN シリーズは、LINバスのみに対応した「Baby-LIN-II」「Baby-LIN-RC-II」に加え、CANバスにも対応*した、「Baby-LIN-RM-II」「Baby-LIN-MB-II」「HARP-5」 の5機種がラインアップされています。
* CANのご利用には、機能をアクティベートするためのライセンスコード(オプション)が別途必要です
「Baby-LIN-II」 は、USBを介してLINバスを制御するためのコンパクトなシステムです。付属のLINWorksソフトウェアをインストールした後にUSBポートに接続し、Baby-LIN-DLLを使用してLINWorks、または独自のアプリケーションを介してLIN-Busdevicesにアクセスします。LINマスタノード または LINスレーブノードをシミュレートすることができます。
なおBaby-LIN-IIはSDF-V3をサポートしています。 この新世代のSDFにより、複数のバスセクション、条件付きマクロコマンド、新しいシステム変数、新しいCRC関数、サブマクロ呼び出しなどの新機能が可能になります。
LIN-bus / CAN-bus シミュレーションデバイス / Lipowsky Industrie-Elektronik 社製 Baby-LIN シリーズ メーカー(Lipowsky Industrie-Elektronik)Webサイト |
3.Modbus
Modbusは、Modicon社(モディコン)が、同社のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)向けに策定したシリアル通信プロトコルで、Modbusプロトコルを実装したネットワークがModobus(モドバス)と呼ばれています。
Modbusプロトコルはシリアル回線(Modbus RTU、Modbus ASCII)とイーサネット(Modbus TCP)用の2つのバージョンが存在します。またプロトコルの仕様は公開されており、さらにとてもシンプルなことから、オートメーションシステムに幅広く使われています。
Modbusは通常、計装および制御デバイスからメインコントローラー、またはデータ収集システム(温度や湿度を測定し、その結果をコンピューターに伝達するシステムなど)に信号を送信するために使用されます。とくに監視制御およびデータ取得(SCADA)システムで監視コンピュータをリモート端末装置(RTU)に接続するためによく使用されます。
用途: PA(Process Automation)、FA(Factory Automation)、設備、AI応用やシミュレーション、監視システム、車載式PLC 等
■Simply Modbus
Simply Modbusは、通信プロトコル Modbusのシステムのためのデータ通信テスト・デバッグソフトウェアです。Modbusマスタ、Modbusスレーブ、Modbus TCPクライアントとして機能する、3種類のソフトウェアを取り扱っています。
・Simply Modbus RTU/ASCII Master
・Simply Modbus RTU/ASCII Slave
・Simply Modbus TCP Client
複数種類まとめてご購入いただく場合はお得なセット価格が適用されます。
お問い合わせの際にはご希望の製品名をお知らせください。
特長:
– 1つの画面からModbusセットアップ実行。設定が少なく構成が簡単。
– 標準Modbusと、Enron Modbus*をサポート。
* Enron社が標準のModiconmodbus(シリアル)を変更して開発した通信プロトコル。2つのプロトコルの主な違いは、レジスタの番号付け、32ビットレジスタと16ビットのサポート、およびイベントログと履歴データを送信する機能です。
Simply Modbus / Modbusシステムのテスト・デバッグソフトウェア メーカー(Simply Modbus)Webサイト |
■Modbus SCADA
WLC Systems 社の「Modbus SCADA (Supervisory Control And Data Acquisition)」 は、 Modbus対応のシステム* よりデータを収集し、HMI(Human Machine Interface)へ 分かりやすい方法で表示し、監視コントロールするためのソフトウェアです。
* Modbus対応システム:PLC(シーケンサ)、計測器、Modbusスレーブ機器として構成されたI/Oモジュール 等
Modbusデバイスの通信接続は、最大 3つのシリアルポートとイーサネット接続を指定でき、有効な接続の場合は別のスレッドによって処理、 ポート未使用の場合は接続を無効化できます。Webサーバー機能によりリモートアクセスが可能、また、優れたデータ収集機能(CSV形式、ログを保持する時間間隔など)を有しております。
Modbus SCADA / Modbusシステムの監視制御とデータ収集用のソフトウェア メーカー(WLC Systems)Webサイト |
4. 産業用通信プロトコルに関連したその他の製品
・ADFWeb社製 各種コンバータ / 異プロトコル間の接続コンバータ
CAN from/to CANopen、Modbus RTU from/to Ethernet 等、異なるプロトコルやフィールドバスの機器同士を接続するADFweb社の各種コンバータ。
・小型ファンレスコンピュータ / VECOW 製 カスタムPC
Vecow社の車両コンピューティングシステム。車載システム管理用のCANバスを実装した 車載組み込みアプリケーション向けのPC(鉄道規格EN50155/EN50121認証)。
・ Leddar Modules / ソリッドステートLiDARセンサモジュール
ソリッドステートLiDARセンサモジュール(RS-485 / Modbusのためのサンプルコードなどを含む)。
・Factory I/O / PLCトレーニング・ソフトウェア
PLC simulators, Modbus, OPC の他、多数の標準的な自動化技術に対応したPLC (Programmable Logic Controller)トレーニングのためのソフトウェア。
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